高齢入居者に連帯保証人がいない場合の実務対応

申込書の「連帯保証人」欄が空欄のまま戻ってくる。理由を聞くと、配偶者は先に亡くなり、きょうだいも同年代で、子どもはいない——。高齢の入居希望者では珍しくない場面です。ここで話が止まってしまうと、審査の中身に入る前に案件が消えます。

ただ、賃貸の実務は保証人だけで成り立っているわけではありません。保証人が担ってきた機能は、大きく分けて①家賃が払われなかったときの回収②何かあったときの連絡先③退去時の手続きや残置物の引き取りの3つで、それぞれに別の受け皿が制度として用意されています。しかも国の制度は、この数年で「保証人がいないこと」を前提にした方向へ動いてきました。

本記事では、連帯保証人を用意できない高齢の入居希望者に対して、不動産会社として何をどの順で確認できるのかを、国土交通省・法務省の公表資料にもとづいて整理します。個別の契約の有効性に関わる判断は弁護士等の専門家にご確認ください。

なぜ高齢者で「保証人がいない」が起きやすいのか

まず、これが個別事情ではなく構造的に増える事象であることを押さえておきます。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」(2024年推計)によれば、世帯主が65歳以上の単独世帯は2020年の738万世帯から2050年には1,084万世帯へと約1.47倍になり、一般世帯総数に占める割合は13.2%から20.6%に上昇すると見込まれています[1]。単身の高齢世帯が5世帯に1世帯を超える水準に近づくということです。

単身であること自体は保証人の不在と同義ではありませんが、頼れる親族が地理的にも年齢的にも限られていく傾向とは重なります。市場全体の動きは高齢者向け賃貸市場の記事で扱っています。

一方、貸す側の姿勢はどうか。内閣府『令和7年版高齢社会白書』によれば、高齢者の入居に関する賃貸人(大家等)の意識は「拒否感はあるものの従前より弱くなっている」が44%、「従前と変わらず拒否感が強い」が16%、「従前より拒否感が強くなっている」が6%で、合わせて7割弱が何らかの拒否感を持っています[2]。ただしその内訳を見ると、最も多いのは拒否感が弱まりつつある層です。断る理由の構造は高齢者の入居を断る理由と対策の記事に整理しました。手当ての材料を示せるかどうかで、話が動く余地は残っているということでもあります。

民法改正で、個人の連帯保証はどう変わったか

意外に見落とされがちなのが、そもそも個人の連帯保証を取る側のルールが2020年に変わっている点です。法務省のパンフレット「2020年4月1日から賃貸借契約に関する民法のルールが変わります」(平成31年2月発行)は、2017年5月に成立した民法の一部を改正する法律が2020年4月1日から施行されたことを説明しています[3]

賃貸借の保証に関わる変更点は2つあります。

第1に、極度額の定めのない個人の根保証契約は無効になりました。同パンフレットは「根保証契約」を将来発生する不特定の債務について保証する契約とし、不動産の賃借人の一切の債務の保証がこれに当たると明記しています。そのうえで、個人(会社等の法人以外の者)が保証人になる根保証契約については、保証人が支払の責任を負う金額の上限となる「極度額」を定めなければ保証契約は無効となり、この極度額は「○○円」などと明瞭に定め、書面に記載しておかなければならないとされています[3]。つまり現在の実務では、個人の連帯保証人を立てる場合も上限額を明示する必要があり、「一切の債務を無制限に保証させる」形は取れません。

第2に、元本確定事由が定められました。個人が保証人になる根保証契約については、①債権者が保証人の財産について強制執行や担保権の実行を申し立てたとき、②保証人が破産手続開始の決定を受けたとき、③主債務者又は保証人が死亡したとき、のいずれかがあった場合、その後に発生する主債務は保証の対象外となります[3]

③は高齢者の賃貸で実際に効いてくる規定です。保証人が同年代のきょうだいや配偶者である場合、契約期間中に保証人が先に亡くなる可能性は小さくありません。そのとき、それ以降に発生する家賃債務は保証の対象から外れます。個人保証を取っておけば長期にわたって安心、という前提そのものが成り立ちにくいということです。なお経過措置として、施行日より前に締結された契約には改正前の民法が適用されますが、施行日後に当事者が合意によって契約を更新したときは改正後の民法が適用されるとされています。ただし原典は、施行日前の保証契約が更新後の債務も保証する趣旨でされ、保証については合意更新がされなかった場合には、施行日後もその保証契約には改正前の民法が適用される、という但し書きを置いています[3]

この点を踏まえると、保証人の有無は「あるかないか」の二択ではなく、回収の実効性をどこで担保するかという設計の問題として扱うほうが実態に合います。既に入居している人の保証人が更新のタイミングで死亡・連絡不能になっていた場合に、更新拒否を検討する前に確認したいことは高齢入居者の保証人が死亡・連絡不能になったとき、更新を拒否する前に確認することで扱っています。

家賃債務保証会社は連帯保証人の代わりになるのか

回収面の受け皿として最も一般的なのが家賃債務保証業者です。制度としては登録制度認定制度の2階建てになっており、この違いを知っておくと保証会社の選び方が変わります。

国土交通省は、家賃債務保証の業務の適正化を図るために告示による家賃債務保証業者の登録制度を創設し、一定の要件を満たす業者を国に登録してその情報を公表することで、家賃債務保証業者選択の判断材料として活用できるようにしています[4]。重要なのは、これが任意の登録制度であり、登録をしなくても家賃債務保証業を営むことは可能だと明記されている点です[4]。登録の有無は業として適法かどうかの線引きではなく、業務適正化のルールを受け入れているかどうかの目印にあたります。登録事業者数は123者(令和8年3月31日時点)です[5]

家賃債務保証と居住支援法人の関係、保証料の負担のしかたなど制度側の全体像は家賃債務保証と居住支援法人の記事で詳しく扱っています。

認定家賃債務保証業者制度とは:保証人なしを条件に含む認定基準

保証人がいないケースで直接効いてくるのが、こちらの認定制度です。国土交通省は、住宅確保要配慮者が利用しやすい家賃債務保証業者として、登録家賃債務保証業者等から一定の要件を満たす者を国土交通大臣が認定する制度を創設しました[6]

公表されている「認定家賃債務保証業者制度の概要」では、認定の基準として次の項目が挙げられています[7]

  • 居住サポート住宅に入居する要配慮者の家賃債務保証を正当な理由なく断らない
  • すべての要配慮者との家賃債務保証契約について、緊急連絡先を親族などの個人に限定しない(法人でも可とする)こと
  • すべての要配慮者との家賃債務保証契約について、保証人の設定を条件としないこと
  • すべての要配慮者との契約に係る保証料が不当に高いものでない
  • 要配慮者との契約実績、標準的な契約内容・条件を公表する
  • 欠格事由(暴力団員の関与なし等)に該当しない 等

「保証人の設定を条件としないこと」が、任意の努力目標ではなく国の認定を受けるための基準として書かれている点が要点です。つまり認定を受けた保証業者に対しては、保証人がいないことを理由に入口で断られる前提を置かなくてよいことになります。あわせて緊急連絡先を親族などの個人に限定しないこととされているため、後述する連絡先の問題も同じ枠組みの中で扱われています。

同概要はまた、認定保証業者はすべての要配慮者の保証に対して住宅金融支援機構(JHF)による保険が利用可能であり、補填率(7割〜9割)および保険対象範囲(未払家賃、原状回復費用)に応じて4区分の保険料率が設定されていて、個別案件ごとに選択可能だとしています[7]。保証業者側のリスクを国の保険で薄める設計になっているということです。

ただし現時点で数は限られます。認定事業者数は12者(令和8年7月31日時点)で[8]、登録事業者数123者[5]と比べると桁が一つ違います。どの地域でも認定業者が見つかる状態には、まだなっていません。営業エリアで使える認定業者があるかは、国土交通省が公表している認定家賃債務保証業者一覧で確認するのが早道です[8]。見つからない場合は、登録業者の中から保証人不要の商品を扱うところを探す、居住支援法人が行う家賃債務保証を検討する、といった順に落としていくことになります。地域の連携先の探し方は居住支援協議会の記事にまとめました。登録制度と認定制度の違いや、認定業者が申込みを断ることを認められない場面の線引きは「認定家賃債務保証業者」とは:登録との違い・5つの認定基準・断れないケースで扱っています。

保証人がいない場合の緊急連絡先と退去時の手続き

回収の手当てがついても、現場が最後まで気にするのは「何かあったときに誰へ連絡するのか」です。ここを親族に限定して考えると、保証人がいないケースはやはり詰まります。

制度側の答えは前述のとおり、緊急連絡先を親族などの個人に限定せず、法人でも可とするという方向です[7]。居住支援法人や見守りサービスの事業者が連絡先として立つ形が想定されています。2025年(令和7年)10月1日に施行された改正住宅セーフティネット法では、居住支援法人等が大家と連携して日常の安否確認・訪問等による見守り、生活や心身の状況が不安定化したときの福祉サービスへのつなぎを行う居住サポート住宅が設けられました[9]。認定基準の1項目目が「居住サポート住宅に入居する要配慮者の家賃債務保証を正当な理由なく断らない」となっているのは[7]、この住宅と保証をセットで機能させる意図によるものと読めます。制度全体の枠組みは改正住宅セーフティネット法の解説記事で扱っています。

安否確認の手段をどう選ぶかの視点は見守りサービスの選び方の記事に、サービスの実例は異変の検知を仕組みに載せ替える見守りを見るにまとめています。連絡先を法人にする設計は、単に代役を立てるという話ではなく、異変の検知そのものを仕組みに載せ替える話でもあります。

申込みで「身元保証会社と契約している」と示されたとき、その会社が何を引き受け何を引き受けないのかをどう確かめるかは高齢者の賃貸入居と身元保証会社:連帯保証人との違いと、国のガイドラインで確認する6項目で扱っています。

3つ目の機能、退去時の手続きと残置物についても制度上の受け皿があります。改正住宅セーフティネット法では居住支援法人の業務に入居者からの委託にもとづく残置物処理が追加され、実施にあたっては国土交通省・法務省が策定したモデル契約条項を活用することとされています[9]。また前掲のJHF保険は保険対象範囲に原状回復費用を含んでいます[7]。費用の負担関係の考え方は原状回復費用の負担に関する記事で整理しました。契約時に確認しておく項目は高齢者の賃貸契約チェックリストにまとめています。

保証人なしの申込で確認する順番

以上を、現場で使える順番に並べ直します。保証人欄が空欄で戻ってきたときに、次の順で埋めていく形です。

第1に、保証人の不在と支払能力を切り離して聞き取ります。保証人がいないことと、家賃を払えるかどうかは別の論点です。年金収入の有無や金額の確認が先で、保証人の有無はそのあとに来ます。ここを混ぜると、支払に問題のない申込者まで入口で落ちます。

第2に、保証の受け皿を認定業者→登録業者→居住支援法人の順に当たります。認定業者は保証人の設定を条件としないことが認定基準に含まれるため[7]、該当があれば話が最も早く進みます。営業エリアに認定業者がない場合は、登録業者の中で保証人不要の商品を扱うところ、あるいは居住支援法人の家賃債務保証を検討します。

第3に、緊急連絡先を親族以外で組み立てます。法人を連絡先にできる前提で、居住支援法人・見守りサービス事業者を含めて候補を出します[7]。連絡先が固まらないまま契約に進むと、入居後の異変時に対応が止まります。

第4に、個人の連帯保証人を併用する場合は極度額を明記します。親族が保証人に立てるケースでも、極度額の定めのない個人の根保証契約は無効となるため[3]、上限額を書面で明瞭に定めます。あわせて、保証人の死亡が元本確定事由にあたること[3]を踏まえ、保証人が高齢の場合は保証会社との併用を前提に設計しておくほうが実務的です。

第5に、退去時の段取りを契約時に決めておきます。残置物処理のモデル契約条項[9]を使うのか、居住支援法人に委託するのかを、入居前の時点で当事者間で確認します。内見・申込の場面で詰まりやすい論点は内見・申込対応の実務の記事にまとめました。

保証以外も含めた審査項目全体の組み立て方は高齢者の入居審査:何を見て、どこまで確認するのかで扱っています。

この5つを順に埋めていくと、オーナーへの説明も「保証人はいませんが、回収は認定/登録保証業者、連絡は法人の緊急連絡先、退去時は委託契約で手当てします」という形にまとまります。オーナーが不安を感じる3つのリスクに、それぞれ別の担い手を当てているという説明の仕方です。

まとめ:欄が空欄でも、機能は分解できる

連帯保証人がいないことは、賃貸借契約が成立しない理由には直結しません。保証人が担ってきた回収・連絡・退去手続きの3つの機能は、家賃債務保証業者、法人の緊急連絡先、残置物処理の委託という形でそれぞれ分解できます。

制度の側もその方向に動いています。国土交通大臣が認定する認定家賃債務保証業者制度では、保証人の設定を条件としないこと緊急連絡先を親族などの個人に限定しないことが認定の基準に含まれています[7]。認定事業者数は12者(令和8年7月31日時点)とまだ限られており[8]、登録事業者数123者(令和8年3月31日時点)[5]の中から選ぶ場面のほうが当面は多いと考えられますが、制度が示している設計思想は保証人の代替を前提としたものです。

あわせて、個人の連帯保証を取る場合も2020年4月1日以降は極度額の定めが要件となり、保証人の死亡が元本確定事由となる点[3]は、高齢の親族を保証人に立てる実務に直接関わります。保証人を立てられたケースでも、それだけで長期の手当てが済むとは限りません。

断る理由を減らす取り組みを社内でどう位置づけるかは空室対策の判断基準の記事不動産会社の社会的意義に関する記事もあわせてご覧ください。空欄の欄をどう埋めるかではなく、その欄が担っていた機能をどこに置き換えるか——問いの立て方を変えるところから始まります。

出典
  1. 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」2024年推計(世帯主が65歳以上の単独世帯は2020年738万世帯→2050年1,084万世帯・約1.47倍/一般世帯総数に占める割合13.2%→20.6%)。ipss.go.jp(PDF)
  2. 内閣府「令和7年版高齢社会白書(全体版)」第1章第2節4 生活環境(高齢者の入居に関する賃貸人〈大家等〉の意識は「拒否感はあるものの従前より弱くなっている」44%・「従前と変わらず拒否感が強い」16%・「従前より拒否感が強くなっている」6%で、7割弱が拒否感を持っている)。cao.go.jp
  3. 法務省「2020年4月1日から賃貸借契約に関する民法のルールが変わります」(平成31年2月発行)。2017年5月に成立した「民法の一部を改正する法律」が2020年4月1日から施行/極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は無効とするルールが新たに設けられた/「根保証契約」とは将来発生する不特定の債務について保証する契約をいい、例えば不動産の賃借人の一切の債務の保証がこれに当たる/極度額は「○○円」などと明瞭に定め、書面に記載しておかなければならない/元本確定事由は①債権者が保証人の財産について強制執行や担保権の実行を申し立てたとき ②保証人が破産手続開始の決定を受けたとき ③主債務者又は保証人が死亡したとき/経過措置として施行日前に締結された契約には改正前の民法が適用され、施行日後に当事者が合意によって更新したときは改正後の民法が適用される。moj.go.jp(PDF)
  4. 国土交通省「家賃債務保証業者登録制度」(家賃債務保証の業務の適正化を図るために、国土交通省の告示による家賃債務保証業者の登録制度を創設/一定の要件を満たす家賃債務保証業者を国に登録し、その情報を公表することにより、家賃債務保証業者選択の判断材料として活用することが可能/これは任意の登録制度であり、登録をしなくても家賃債務保証業を営むことは可能)。mlit.go.jp
  5. 国土交通省「登録家賃債務保証業者一覧」(登録事業者数:123者・令和8年3月31日時点)。mlit.go.jp
  6. 国土交通省「認定家賃債務保証業者制度」(住宅確保要配慮者が利用しやすい家賃債務保証業者として、登録家賃債務保証業者等から一定の要件を満たす者を国土交通大臣が認定する制度を創設)。mlit.go.jp
  7. 国土交通省「認定家賃債務保証業者制度の概要」(認定の基準:居住サポート住宅に入居する要配慮者の家賃債務保証を正当な理由なく断らない/すべての要配慮者との家賃債務保証契約について、緊急連絡先を親族などの個人に限定しない〈法人でも可とする〉こと・保証人の設定を条件としないこと/すべての要配慮者との契約に係る保証料が不当に高いものでない/要配慮者との契約実績、標準的な契約内容・条件を公表する/欠格事由〈暴力団員の関与なし等〉に該当しない 等。家賃債務保証保険:認定保証業者はすべての要配慮者の保証に対してJHFによる保険が利用可能で、補填率〈7割〜9割〉及び保険対象範囲〈未払家賃、原状回復費用〉に応じて4区分の保険料率が設定されており、個別案件ごとに選択可能)。mlit.go.jp(PDF)
  8. 国土交通省「認定家賃債務保証業者一覧」(認定事業者数:12者・令和8年7月31日時点)。mlit.go.jp
  9. 国土交通省「住宅セーフティネット制度」(改正住宅セーフティネット法は令和7年〈2025年〉10月1日施行/居住サポート住宅は居住支援法人等が大家と連携して日常の安否確認・訪問等による見守り・生活や心身の状況が不安定化したときの福祉サービスへのつなぎを行う住宅/同日から居住支援法人の業務に入居者からの委託に基づく残置物処理を追加し、実施にあたっては国土交通省・法務省が策定したモデル契約条項を活用)。mlit.go.jp

高齢者入居支援の始め方を、1冊にまとめました

市場データ・制度・リスクと対策・導入フローがわかる無料ホワイトペーパーを配布中です。