高齢者の賃貸入居と身元保証会社:連帯保証人との違いと、国のガイドラインで確認する6項目

身寄りのない高齢者から申込みが入り、緊急連絡先の欄で止まる。そこで入居希望者や仲介から「身元保証会社と契約しているので大丈夫です」と言われる——この場面で、貸す側は何を見て可否を決めればよいのでしょうか。

困るのは、身元保証会社が何を引き受け、何を引き受けないのかが会社ごとに違うことです。家賃債務保証会社のように登録制度や認定基準があるわけでもありません。総務省の報道資料は、令和5年8月の時点で「事業者が提供するサービスについて直接規律・監督する法令・制度等はなく、監督官庁や事業者団体も存在しない」と述べています[4]

ただし、判断の手がかりが無いわけではありません。令和6年6月に、9つの府省庁の連名で「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」が公表されています[2]。このガイドラインには、賃貸の実務に直接かかわる記述——緊急連絡先の受託、賃貸借契約の解除と残置物の処理、預託金の管理——が具体的に書かれており、末尾には30項目のチェックリストまで付いています[2]

この記事では、その中から貸す側が申込みの段階で確認できる論点を抜き出して整理します。なお以下は制度と公表資料の読み方であり、個別の契約の可否は当事者間の判断によります。

高齢者の「身元保証」とは何か——賃貸の連帯保証人・緊急連絡先との違い

まず言葉の整理からです。賃貸の現場で出てくる3つは、役割がそれぞれ違います。

役割何を負うか
連帯保証人・家賃債務保証会社 家賃や原状回復費など、賃貸借契約から生じる金銭債務を保証する
緊急連絡先 金銭債務は負わない。連絡が取れないときに連絡がつく先として届け出るもの
身元保証(高齢者等終身サポート事業) 入退院・入退所の手続支援、緊急連絡先の受託、日常生活支援、死後事務など本人の生活と死後の事務を、家族・親族に代わって担う[2]

ここを混同したまま話が進むのが、いちばん危ない状態です。身元保証会社と契約していても、それだけでは家賃の保証にはなりません。逆に家賃債務保証会社に加入していても、入院時の手続や死後の残置物処理までは通常カバーされません。2つは代替関係ではなく、別々の穴を埋めるものです。

家賃側の手当てをどう組むかは高齢入居者に連帯保証人がいない場合の実務対応と、2025年10月施行の改正法で新設された「認定家賃債務保証業者」とは:登録との違い・5つの認定基準・断れないケースで扱っています。この記事はその外側、身元保証の側の話です。

なお、ガイドラインはこの事業の呼称を、従来の「身元保証等高齢者サポート事業」から「高齢者等終身サポート事業」に改めています[2]。検索や資料収集の際は、両方の呼称で当たると漏れが減ります。

身元保証会社に国のルールはあるのか——令和6年6月のガイドライン

この分野の公的な資料は、大きく2つです。

  • 総務省行政評価局の実態調査(令和5年8月)——行政機関による事業者への実地調査を含む全国調査として実施されたもの[4]。204事業者を調査しています[1]
  • 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)——内閣官房(身元保証等高齢者サポート調整チーム)、内閣府 孤独・孤立対策推進室、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省の連名[2]

ガイドラインは、対象とする事業者を次の3要件を満たすものとしています[2]

  1. 「身元保証等サービス」及び「死後事務サービス」を提供するものであること
  2. 本人(契約者)と締結した契約に基づき、サービス提供するものであること
  3. 事業として継続的に提供するものであること

押さえておきたいのは、これが法令ではないという点です。ガイドライン自身が「事業者が取り組むことが重要と考えられる事項等を取りまとめたもの」と位置づけており[2]、違反に罰則があるわけではありません。ただし同時に「利用者による事業者判断の目安ともなり得るもの」とも書かれています[2]貸す側にとっては、この「判断の目安」の部分がそのまま使えます。

また、弁護士・司法書士・行政書士など業法に基づく規制が既に存在する業種は、ガイドラインの対象外とされています[2]。士業が受任者になっている場合は、当たる資料が変わります。

今後については、ガイドラインの「今後の課題」に「優良な事業者を認定する仕組みの創設等について、検討する」と記されています[2]。家賃債務保証業で登録制度から認定制度へ進んだのと似た経路をたどる可能性がある、という程度には見ておく余地があります。

身元保証会社は賃貸の緊急連絡先を引き受けてくれるのか

申込みの実務でいちばん知りたいのはここでしょう。ガイドラインは「緊急連絡先の受託等」という項目を独立して立てており、事業者に対して次のような対応を求めています[2]

  • 緊急時に対応できる事項(土日・休日の対応体制等)とこれに要する費用を丁寧に説明することが重要である
  • 緊急連絡先の受託をする場合には、事業者の連絡先を関係機関等に伝える方法についても利用者と相談し、定めておくことが望ましい(かかりつけ医・担当のケアマネジャー等にあらかじめ知らせておく、利用者が身に着けておく、自宅内の分かりやすい位置に掲示しておく等)
  • 入院時・入所時や緊急時に連絡を希望する先の有無や連絡の可否についても確認しておくことが望ましい

つまり「緊急連絡先を引き受ける」こと自体は想定されています。そのうえで貸す側が確認すべきは、引き受けるかどうかではなく受け方です。具体的には次の3点になります。

  1. 土日・夜間に連絡がつくのか。ガイドラインが「土日・休日の対応体制等」を説明事項として名指ししているのは、ここが会社ごとに分かれるからです[2]
  2. 管理会社の連絡先を、事業者側の「関係機関」に含めてもらえるか。ガイドラインが挙げる例はかかりつけ医とケアマネジャーですが[2]、賃貸では管理会社が最初に異変に気づく立場になります
  3. 連絡を受けた後に何をするのか。受託は「連絡がつく」ところまでで、駆けつけや室内への立入りまで含むとは限りません

3点目は、実際に連絡が取れなくなったときの動き方と直結します。管理会社の側でどこまで踏み込めるのかは入居者と連絡が取れない:部屋に入れるのか、警察はいつ呼ぶのかに整理しています。

身元保証会社の死後事務は、賃貸借契約の解除と残置物まで届くのか

ガイドラインには「家屋等の賃貸借契約について」という項目が、契約締結時と履行時の両方に置かれています[2]。賃貸の側からすると、この記事でいちばん実利のある箇所です。

契約締結時の記述はこうです[2]

  • 利用者の希望がある場合には、利用者の死亡時に契約関係及び残置物を円滑に処理することができるよう、あらかじめ、利用者(賃借人)と受任者である事業者との間で、①賃貸借契約の解除と②残置物の処理に関する死後事務委任契約を締結しておくことが望ましい
  • その際、国土交通省及び法務省が策定した「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を参考とされたい[3]
  • 推定相続人が明らかである場合には、可能であれば推定相続人に連絡を取り、依頼を受けた旨の了解を得るとともに、賃貸人にもその依頼内容を連絡しておくことが望ましい

履行時、すなわち実際に利用者が亡くなったときは「賃貸人に連絡し、残置物の整理のための必要な手続等を行うことが重要である」とされています[2]

ここから、貸す側の確認事項が2つ出てきます。

ひとつは、その入居者と身元保証会社の間で、賃貸借契約の解除と残置物処理を含む死後事務委任契約が結ばれているのかどうか。ガイドラインが「望ましい」と書いているということは、裏を返せば結ばれていない契約もあり得るということです。死後事務サービスを契約していても、対象が葬送と行政手続だけで、部屋の話が入っていない場合があります。

もうひとつは、その委任の内容が貸主側に伝わっているか。ガイドラインは賃貸人への連絡を「望ましい」としていますが[2]、こちらから聞かなければ届かないのが実情です。申込みの段階で、受任者名と委任範囲を書面で示してもらうところまでを確認事項にしておくと、亡くなった後の連絡先探しから始める事態を避けられます。

モデル契約条項そのものの中身——誰を受任者にできるのか、解除関係事務委任と残置物関係事務委任がどう分かれているのかは残置物はどう片付けるのか——「誰を受任者にできるか」から読む国交省モデル契約条項の実務で詳しく扱っています。

なお、死亡届については注意が必要です。ガイドラインは、任意後見人・任意後見受任者ではない事業者は自身で死亡届を提出することができないと明記しています[2]。身元保証会社がいれば死亡届まで進むと考えていると、そこで止まります。

身元保証の預託金はどこに預けられているのか

入居審査そのものからは一歩離れますが、身元保証会社が事業を続けられるかは、長期の入居を受けるうえで無関係ではありません。総務省の調査は、預託金の管理状況を次のように整理しています[1]

預託金の有無・管理方法事業者数(調査対象204事業者)
預託金あり157(77.0%)
 うち 自社の専用口座で管理する108(68.8%)
 うち 自社以外の口座(信託口座を除く)で管理する33(21.0%)
 うち 信託会社の信託口座で管理する29(18.5%)
預託金なし47(23.0%)

同調査は、預託金の管理方法についての法令上の規制等はないと述べたうえで、過去に事業者の経営破綻によりサービスが提供されず預託金も返還されなかった事態が生じたことに触れています[1]これを受けてガイドラインは、前払金(預託金)について事業者自身の運営資金等とは明確に区分して管理すること、利用者に定期的に管理状況を報告すること、そして信託銀行または信託会社を相手方とする信託契約を利用して保全することが望ましいとしています[2]

調査時点で、預託金ありとする157事業者のうち信託口座を使っていたのは18.5%にとどまります[1](令和5年8月公表・調査開始時点は令和4年8月[1])。ガイドラインが望ましいとする形はまだ多数派ではない、というのが出発点です。

もうひとつ、契約書面の状況も押さえておく価値があります。同調査で契約書や重要事項説明書といった契約関係の書類を入手できた132事業者のうち、重要事項説明書の作成を確認できたのは28事業者(21.2%)でした[1]。調査対象204事業者のうち、書類そのものを入手できたのが132事業者にとどまる点もあわせて押さえておくとよいでしょう[1]。宅建業の感覚からすると意外に映るかもしれませんが、この事業には重要事項説明の法定義務がないためです。

身元保証会社を選ぶときに管理会社が確認できること——国のチェックリスト30項目

ガイドラインには別紙としてチェックリストが付いており、30項目が「契約の締結」「履行の提供」「事業者の体制」に分かれています[2]。本来は事業者の自主点検と利用者の事業者選びのためのものですが、貸す側が申込みを見るときにもそのまま使えます。賃貸に効く項目を抜き出すと、次のようになります。

チェックリストの項目[2]賃貸での見え方
身元保証の内容と費用の取扱いが明らかになっている 何を引き受け、何を引き受けないのかが書面で分かるか
緊急時の連絡先や連絡方法が明らかになっている 土日・夜間を含めて、管理会社からどこへかければよいか
死後事務で行う内容と費用の取扱いが明らかになっている 賃貸借契約の解除と残置物の処理が範囲に入っているか
預託金の額やその根拠/管理方法等の取扱いが明らかになっている 区分管理や信託保全がされているか
契約に関する重要事項を説明し、書面(重要事項説明書)で交付している 交付されているか(契約書類を入手できた132事業者では21.2%[1]
事業者に関する情報や提供しているサービス情報がHP等で公表されている 組織・人員体制、費用の内訳、解約時の返金の扱いが読めるか[2]

ガイドラインは情報開示について、基本情報・財務諸表、サービス内容と費用、支払方法、サービスを利用できない者、履行状況の確認方法、契約変更や解約の事由・手続、解約時の返金の取扱い、預託金の管理方法、寄附や遺贈に関する取扱方針、個人情報の取扱方針、相談対応体制・連絡先——といった事項をホームページ等で公表することが考えられるとしています[2]公表されている項目の少なさ自体が、判断材料になります。

もうひとつ、母体業種も参考になります。総務省調査では、母体の内訳は士業55事業者(27.0%)、賃貸住宅や介護施設等への入所支援33事業者(16.2%)、介護サービス業25事業者(12.3%)、不動産業5事業者(2.5%)、家賃保証会社2事業者(1.0%)で、母体がないと思われる事業者も55事業者(27.0%)ありました[1]住まいの支援を出自とする事業者は全体の一部にとどまります。

審査の場面で何をどこまで確認するかの全体像は高齢者の入居審査:何を見て、どこまで確認するのかにまとめています。

身元保証を付ければ、入居後の安否は見てもらえるのか

ここが、この記事でもっとも誤解されやすい点です。ガイドラインが定めている身元保証等サービスは、入院・退院、入所・退所、緊急連絡先の受託であり、日々の安否を継続的に確認する仕組みではありません[2]

整理すると、身元保証会社が動くのは出来事が起きた後です。

  • 入院した——手続を支援する
  • 施設に入る——手続を支援する
  • 緊急の連絡が入った——受ける
  • 亡くなった——死後事務を行う

抜けているのは「誰も出来事に気づかない」場合です。室内で倒れて連絡ができない状態では、緊急連絡先の受託先には何も届きません。身元保証は、異変が伝わったあとの受け皿であって、異変を検知する仕組みではない——ここが賃貸にとっての空白になります。

この空白を埋めるのが見守りです。センサーや通信で異変そのものを検知し、通知先を事業者側が担うタイプであれば、身寄りの有無に関係なく成立します。賃貸オーナー・管理会社向けにこの形をとっているものとしては身元保証だけでは埋まらない日々の安否確認の仕組みを見るという選択肢があります。

実際に運用するときに先に決めておきたいのは、異変を検知したときの通知先を、身元保証会社にするのか管理会社にするのかという一点です。両者が並ぶ物件では、どちらが第一報を受け、どちらが現地へ動くのかが決まっていないと、通知だけが飛んで誰も動かない状態が起きます。導入前に通知先と対応フローの設計を相談するところまで含めて詰めておくと、運用が始まってからの取り決め直しを避けられます。

費用を貸主と入居者のどちらが持つのか、自治体の緊急通報システムに乗れるのかという判断は高齢入居者の見守りの費用は誰が負担するのか:自治体の緊急通報システムの要件と、使えない場合の選択肢で扱っています。

まとめ:身元保証は入居時の手当てであって、入居後の見守りではない

申込みで「身元保証会社と契約している」と言われたときの確認の順序を整理します。

  1. 家賃の保証と混同していないかを分ける——身元保証は金銭債務の保証ではありません。家賃側は連帯保証人か家賃債務保証会社で別に手当てします
  2. 緊急連絡先の受け方を聞く——土日・夜間の体制、管理会社を関係機関に含めてもらえるか、連絡を受けた後に何をするのか[2]
  3. 死後事務に賃貸借契約の解除と残置物処理が入っているかを確認する——ガイドラインは、この2つを含む死後事務委任契約の締結と、賃貸人への連絡を「望ましい」としています[2]
  4. 書面の有無を見る——重要事項説明書の交付、預託金の管理方法、HPでの情報開示。国のチェックリスト30項目がそのまま確認の枠になります[2]
  5. 入居後の安否は別に設計する——身元保証は異変が伝わったあとの受け皿であり、異変の検知は別の仕組みが要ります

身元保証会社が付いていることは、断る理由にも、無条件に受ける理由にもなりません。何を引き受け、何を引き受けないのかを書面で確かめれば、貸す側が自分で埋めるべき部分がはっきりします。令和6年6月のガイドラインは、その確かめ方を公的な文書の形で示した最初のまとまった資料です[2]使わない手はありません。

出典
  1. 調査対象204事業者、うち契約関係の書類を入手できた132事業者における重要事項説明書の作成確認28(21.2%)、預託金あり157(77.0%)/自社の専用口座で管理する108(68.8%)/信託会社の信託口座で管理する29(18.5%)/自社以外の口座(信託口座を除く。)で管理する33(21.0%)/預託金なし47(23.0%)、「預託金の管理方法についての法令上の規制等はない」、母体業種(士業55(27.0%)・賃貸住宅や介護施設等への入所支援33(16.2%)・介護サービス業25(12.3%)・不動産業5(2.5%)・家賃保証会社2(1.0%)・母体がないと思われる事業者55(27.0%))、調査開始時点が令和4年8月であること:総務省行政評価局「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書」(令和5年8月)。soumu.go.jp(PDF)(2026年9月4日確認)
  2. 令和6年6月・9府省庁連名であること、呼称を「高齢者等終身サポート事業」としたこと、対象事業者の3要件、業法に基づく規制が既に存在する業種を対象外とすること、「現時点において事業者が取り組むことが重要と考えられる事項等を取りまとめたもの」「利用者による事業者判断の目安ともなり得るもの」、緊急連絡先の受託等(土日・休日の対応体制等と費用の説明/連絡先を関係機関等に伝える方法/連絡を希望する先の有無と可否の確認)、家屋等の賃貸借契約(①賃貸借契約の解除と②残置物の処理に関する死後事務委任契約/推定相続人および賃貸人への連絡/履行時は「賃貸人に連絡し、残置物の整理のための必要な手続等を行うことが重要である」)、任意後見人等でない事業者は自身で死亡届を提出できないこと、前払金(預託金)の区分管理・定期報告・信託契約による保全、情報開示11項目、「優良な事業者を認定する仕組みの創設等について、検討する」、別紙チェックリスト30項目:内閣官房(身元保証等高齢者サポート調整チーム)・内閣府 孤独・孤立対策推進室・金融庁・消費者庁・総務省・法務省・厚生労働省・経済産業省・国土交通省「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(令和6年6月)。moj.go.jp(PDF)(2026年9月4日確認)
  3. 国土交通省・法務省が策定した残置物の処理等に関するモデル契約条項:国土交通省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」。mlit.go.jp(2026年9月4日確認)
  4. 「事業者が提供するサービスについて直接規律・監督する法令・制度等はなく、監督官庁や事業者団体も存在しないため、利用者とのトラブルも発生していますが、対策が十分に講じられてきたとは言えない状況です。」、行政機関による事業者への実地調査を含めた全国調査を実施したこと、厚生労働省・消費者庁及び法務省に通知したこと(令和5年8月7日公表):総務省「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 <結果に基づく通知>」。soumu.go.jp(2026年9月4日確認)

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