改正住宅セーフティネット法で不動産会社がやること:登録住宅の申請手順と居住サポート住宅の使い分け

「改正住宅セーフティネット法が施行されたと聞いたが、不動産会社として何が変わるのか分かりにくい」——そんな声をよく耳にします。2025年(令和7年)10月1日に施行されたこの改正は、高齢者などが住まいを確保しやすくするための仕組みを整えるものです[1]。本記事では、国土交通省が公表する一次情報をもとに、制度の要点と不動産会社が押さえておきたい実務ポイントを、やさしく整理します。

そもそも住宅セーフティネット制度とは(登録住宅の位置づけ)

住宅セーフティネット制度は、高齢者や低額所得者、障害者、子育て世帯などの「住宅確保要配慮者」が、賃貸住宅に入居しやすくなるよう支援する国の枠組みです。国土交通省は、対象となる住宅確保要配慮者として、低額所得者・被災者・高齢者・障害者・子育て世帯・外国人などを挙げており、地方自治体が独自に対象を追加できる仕組みにもなっています[1]

背景にあるのは、単身世帯の増加や持ち家率の低下といった社会の変化です。総務省統計局の人口推計によると、2025年10月1日現在の高齢化率は29.4%と過去最高を更新しており[2]、賃貸住宅を必要とする高齢者は構造的に増えています。国はこうした変化を受け、「誰もが安心して賃貸住宅に居住できる社会」の実現を目的として、今回の改正を行いました[1]

2025年10月の改正で何が変わったか——居住サポート住宅の新設

今回の改正の柱のひとつが、新たに設けられた「居住サポート住宅」の認定制度です。これは、居住支援法人などが大家と連携し、日常の安否確認や訪問などによる見守り、生活・心身の状況が不安定になったときに福祉サービスへつなぐといった支援を行う住宅を、行政が認定する仕組みです[1]。単に部屋を貸すだけでなく、入居後の見守りや相談までを含めて支える点が特徴です。

もうひとつの実務上の大きな変化が、2025年10月1日から居住支援法人の業務に「入居者からの委託に基づく残置物処理」が加わったことです[1]。高齢の単身入居者を受け入れる際、大家が不安に感じやすいのが「亡くなった後の家財の扱い」ですが、こうした残置物への対応が制度面から整理されたことは、受け入れ判断の材料になります。

セーフティネット住宅の登録と居住サポート住宅の認定:どちらを選ぶかの判断基準

現場で混同されやすいのが、「セーフティネット登録住宅」と「居住サポート住宅」です。名前が似ていますが、行政の関わり方も、大家に求められることも異なります。まず押さえたいのは、登録住宅は賃貸人が登録する制度、居住サポート住宅は行政が認定する制度という点です[1]

セーフティネット登録住宅と居住サポート住宅の比較(国土交通省の公表内容にもとづく[1]
項目セーフティネット登録住宅居住サポート住宅
行政の関与賃貸人が都道府県・政令市・中核市に登録する行政が認定する
位置づけ住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅入居後の支援までを組み込んだ住宅
支援の中身登録された住宅情報を都道府県等が広く提供する①日常の安否確認 ②訪問等による見守り ③生活・心身の状況が不安定化したときの福祉サービスへのつなぎ
支援の担い手居住支援法人等。社会福祉法人・NPO法人・管理会社等、居住支援法人以外でも可能
情報の探し方セーフティネット住宅情報提供システム居住サポート住宅情報提供システム

大家に説明するときの違いは、はっきりしています。登録住宅は「入居を拒まない」という募集の姿勢を登録するもので、支援そのものが付いてくるわけではありません。これに対して居住サポート住宅は、見守りや福祉へのつなぎを担う相手とセットで認定されるため、大家が最も気にする「入居後に誰が見てくれるのか」に答えられる枠組みになっています。高齢の単身入居者を前に大家がためらう場面では、後者の説明のほうが響きやすい場面が多いといえます。後者の認定基準や申請の流れをより詳しく知りたい場合は、「居住サポート住宅」の認定を受けるには——登録住宅との違いと申請の流れで整理しています。

もうひとつ実務で効くのが、改修費への補助です。セーフティネット専用住宅または居住サポート住宅の改修費に対する補助制度が用意されており、募集条件の見直しと改修をあわせて検討する余地があります[1]。ただし改修費補助を受けた住宅は、10年間、入居者を住宅確保要配慮者に限定した住宅として管理する必要がある点は、提案の前に大家と共有しておきたい条件です[1]。補助額や募集の詳細は地方公共団体によって扱いが異なるため、商圏の自治体の募集内容を確認してから提案するのが安全です。空室の募集方針そのものをどう見直すかは、空室対策の新常識:ターゲットを高齢者に広げる判断基準で判断軸を整理しています。

不動産会社の実務手順:登録の申請から居住支援法人との連携まで

制度が整っても、それを大家や入居希望者に橋渡しするのは現場の不動産会社です。まず押さえたいのは、①住宅確保要配慮者の範囲と、②居住サポート住宅という選択肢があること、③残置物処理を含む支援の仕組みが用意されていること、の3点です[1]。これらを理解しておけば、高齢者の入居に慎重な大家に対して、「どんな支援があるのか」を具体的に説明できます。

実務では、地域の居住支援法人や居住支援協議会との接点をつくっておくことが有効です。制度上の支援と、民間の見守り・保険(補償内容は商品により異なります)といった備えを組み合わせて示すことで、大家の不安を和らげやすくなります。安否確認や見守りの具体的な仕組みは大家の不安を和らげる見守りの仕組みを見ることで確認できます。接点のつくり方や協議会の設立状況については居住支援協議会とは?不動産会社が連携して得られるメリットにまとめました。

改正住宅セーフティネット法は、高齢者などの入居を「制度が後押しするテーマ」に変えつつあります。要点を理解し、支援の仕組みとセットで大家に提案できる不動産会社は、増える高齢者の住まいニーズを受け止める役割を担えます。この取り組みを自社の社会的な役割としてどう説明するかは、不動産会社のためのESG・社会的意義:高齢者住宅支援の価値で、国のガイダンスの評価項目に沿って整理しています。まずは制度の全体像を押さえ、自社の対応方針を整理することから始めてみてください。登録の具体的な要件(面積・耐震・家賃)と申請窓口はセーフティネット住宅の登録とは:面積・耐震・家賃の基準と申請の流れで詳しく扱っています。

出典
  1. 国土交通省「新たな住宅セーフティネット制度について(改正住宅セーフティネット法・2025年〈令和7年〉10月1日施行/居住サポート住宅・残置物処理)」。mlit.go.jp
  2. 総務省統計局「人口推計(2025年10月1日現在・令和2年国勢調査を基準とする確定値)」高齢化率29.4%(65歳以上人口3,622万人)。同値は内閣府『令和8年版高齢社会白書(全体版)』第1章第1節1 表1-1-1 に掲載。cao.go.jp(PDF)
  3. 政府広報オンライン「住まいの確保に困ったときは」(住宅セーフティネット制度・改正法の解説)。gov-online.go.jp

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