見守りサービス比較の視点:高齢入居者の安否確認をどう選ぶ

「高齢の入居者に貸したいが、室内で体調を崩したときに気づけるか不安」——高齢者の入居に慎重な大家が挙げる懸念のひとつが、日常の安否をどう確認するかという点です。こうした不安に応える手段が「見守りサービス(安否確認サービス)」です。ただし、ひと口に見守りといってもセンサー型から緊急通報型、電話や訪問による確認までタイプはさまざまで、費用や入居者の負担感も異なります。本記事では、総務省・国立社会保障人口問題研究所・日本少額短期保険協会などの一次情報をもとに、見守りサービスを比較するときの視点と、不動産会社が大家・入居者に勧める際のチェックポイントを整理します。数値には対応する調査年を併記し、断定的な表現は避けてまとめています。

なぜ今、高齢入居者の見守りが必要か

背景にあるのは、高齢化と単身世帯の増加という構造的な変化です。総務省統計局の人口推計によると、2025年10月1日現在の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は29.4%と過去最高を更新しました[1]。さらに国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計(2024年推計)」では、65歳以上の単独世帯は2020年の737.8万世帯から2050年には1,083.9万世帯へ増え、一般世帯に占める割合も13.2%から20.6%へ上昇すると見込まれています[2]。単身で暮らす高齢者が増えるほど、日常的に安否を気づかう仕組みの必要性は高まります。

安否確認が重要になる理由は、発見の遅れが金銭面・心理面の負担につながりやすいためです。日本少額短期保険協会が2025年12月に公表した「第10回 孤独死現状レポート」によると、少額短期保険会社の孤独死保険の支払データ(2015年4月〜2025年3月の累積、n=12,105)では、死亡から発見までの平均日数は全体で19日、死亡時の平均年齢は63.6歳とされています[3]。発見が遅れるほど居室の損害が拡大しやすく、大家の負担も大きくなりがちです。見守りサービスは、こうした「発見の遅れ」を減らす日常の仕組みとして位置づけられます。

見守りサービスの主なタイプと比較の軸

見守りサービスは検知の方法によって大きく次のタイプに分けられ、それぞれ長所と注意点が異なります。比較するときは「どうやって異常を検知するか」「入居者の手間や心理的負担はどうか」「費用は誰が負担するか」の3点を軸に見ると整理しやすくなります。

① センサー型(人感・開閉・電力など):室内の動きやドアの開閉、電力使用量などの変化から生活の異常を検知するタイプです。入居者が特別な操作をしなくてよい点が利点ですが、機器の設置やプライバシーへの配慮が論点になります。② 緊急通報型(ボタン・ペンダント):入居者がボタンを押すとコールセンター等へつながるタイプで、急な体調不良に自分から助けを求められます。ただし、意識を失った場合など自ら操作できない状況では機能しにくい面があります。③ 電話・訪問型:定期的な安否確認の電話や訪問で状態を確かめる人的なタイプで、会話による安心感が得られますが、確認の頻度と人手の確保が課題です。④ アプリ・カメラ型:スマートフォンのアプリやカメラで家族等が状況を把握するタイプで、離れて暮らす家族との連携に向く一方、入居者側の機器操作やプライバシーへの同意が前提になります。

見守りサービスの4タイプ比較(本文で述べた内容の整理)
タイプどうやって異常を検知するか入居者の操作・負担注意点
① センサー型
(人感・開閉・電力など)
室内の動き・ドアの開閉・電力使用量などの変化から生活の異常を検知特別な操作は不要機器の設置とプライバシーへの配慮が論点
② 緊急通報型
(ボタン・ペンダント)
入居者がボタンを押すとコールセンター等へつながる自分から助けを求める操作が必要意識を失った場合など、自ら操作できない状況では機能しにくい
③ 電話・訪問型定期的な安否確認の電話や訪問で状態を確かめる会話による安心感が得られる確認の頻度と人手の確保が課題
④ アプリ・カメラ型スマートフォンのアプリやカメラで家族等が状況を把握入居者側の機器操作が前提プライバシーへの同意が前提になる

どのタイプが適しているかは、入居者の生活スタイルや心身の状況、家族との距離感、そして大家がどこまでの安心を求めるかによって変わります。単一のタイプで全てをまかなうのではなく、複数を組み合わせて弱点を補う設計が現実的です。比較の際は、機器の月額料金や初期費用、通報時の対応主体(誰が駆けつける・連絡するのか)、個人情報やプライバシーの取り扱いも合わせて確認すると、大家・入居者双方が納得しやすくなります。

不動産会社が勧める際のチェックポイント

不動産会社が見守りサービスを大家や入居者に案内する際は、次の点を押さえると説明が伝わりやすくなります。第一に、誰の不安に応えるサービスかを明確にすること。大家にとっては「発見の遅れによる損害を減らす備え」、入居者にとっては「万一のときに助けを呼べる安心」と、立場によって価値の伝え方が変わります。第二に、入居者の負担と同意です。見守りには生活情報の把握が伴うため、目的と範囲を丁寧に説明し、本人の同意を得たうえで導入することが欠かせません。第三に、費用と対応体制を具体的に示すこと。月額の目安や初期費用、通報時に誰がどう動くのかを整理して伝えると、比較検討がしやすくなります。その費用を貸主と入居者のどちらが持つのか、自治体の緊急通報システムで賄える範囲がどこまでかは、高齢入居者の見守りの費用は誰が負担するのか:自治体の緊急通報システムの要件と、使えない場合の選択肢で自治体の案内から整理しています。

本人の同意をどの方法で取り、書面に何を書くかは賃貸に見守りを入れるときの同意の取り方:契約書と同意書に書く項目で扱っています。

また、見守り(早期発見)と保険(金銭的補償)は役割が異なるため、両方をあわせて提案するとリスクを多面的に和らげられます。前掲のとおり発見までの平均日数は19日とされており[3]、見守りで発見を早めつつ、万一の損害には孤独死保険などで備えるという二段構えが説明の軸になります。保険側で何がどこまで補償されるのかは、孤独死保険とは?補償の範囲・オーナーへの説明ポイントで費用の内訳ごとに整理しています。具体的な見守りの仕組みや対応内容を見ることで確認できます。断定的な効果は約束せず、「どのリスクに」「どこまで」応えるサービスなのかを事実に沿って示すことが、大家・入居者の信頼につながります。見守り・保険・受け入れに前向きな大家との接点をあわせて用意できる不動産会社は、増える単身高齢者の住まいニーズを受け止めやすくなります。見守りの導入をいつ・誰に・どの書面で合意しておくかは、高齢入居者とのトラブルを未然に防ぐコミュニケーション設計で入居前から退去時までの流れとして整理しています。

出典
  1. 総務省統計局「人口推計(2025年10月1日現在・令和2年国勢調査を基準とする確定値)」高齢化率29.4%(65歳以上人口3,622万人)。同値は内閣府『令和8年版高齢社会白書(全体版)』第1章第1節1 表1-1-1 に掲載。cao.go.jp(PDF)
  2. 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計・2024年推計)」。65歳以上の単独世帯737.8万世帯(2020年)→1,083.9万世帯(2050年推計)、一般世帯に占める割合13.2%→20.6%。ipss.go.jp(PDF)
  3. 一般社団法人 日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会「第10回 孤独死現状レポート」(2025年12月/データ収集期間2015年4月〜2025年3月、n=12,105)。発見までの平均日数19日・死亡時の平均年齢63.6歳。shougakutanki.jp(PDF)

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