空室を高齢者や子育て世帯にも開きたい——そう考えたとき、最初の選択肢になるのが「セーフティネット住宅(登録住宅)」への登録です。ただ、調べはじめると自治体のページが並び、面積の数字も新築と既存で違う。この記事では、登録できる住宅の条件と申請の流れを、自治体が公表している登録基準そのものから整理します。
セーフティネット住宅(登録住宅)とは何か
住宅セーフティネット法にもとづく制度で、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅として登録する仕組みです[1]。登録すると、国交省の「セーフティネット住宅情報提供システム」に掲載され、住まいを探している人や支援団体から見つけてもらえるようになります[4]。
住宅確保要配慮者は法律で定められており、低額所得者・被災者(発災後3年以内)・高齢者・障害者・子育て世帯などが含まれます[3]。登録するときは、このうちどの属性を受け入れるかを選べます[3]。「全部を受け入れなければならない」制度ではありません。
登録できる住宅の面積基準:新築25㎡・既存18㎡
いちばん最初に確認するのが規模の基準です。川崎市と福岡市が公表している登録基準は次のとおりで[2][3]、両市で内容が一致しています。
| 住宅の種類 | 新築住宅 | 既存住宅 |
|---|---|---|
| 一般住宅 | 25㎡以上 | 18㎡以上 |
| 台所等が一部共用 | 18㎡以上 | 13㎡以上 |
既存住宅なら18㎡から登録できるのが実務上のポイントです。単身向けのワンルームでも、多くが基準を満たします。台所や浴室を共用にしている物件なら13㎡まで下がります[2][3]。
共同居住型(いわゆるシェアハウス)は別の基準で、1人あたりの専用居室が9㎡以上、住宅全体で(15×入居可能者数+10)㎡以上とされています[3]。
なお川崎市は令和7年(2025年)10月1日から法改正等により面積基準等が変更されたと明記しており、同市では変更後の基準で運用しています[2]。自治体によって緩和措置を設けている場合もあるため(福岡市も独自の緩和を公表しています[3])、最終的にはお住まいの自治体の基準を確認してください。
耐震性の要件:昭和56年6月1日が分かれ目
構造については、新耐震基準相当の耐震性を有していることが求められます[2]。具体的には昭和56年6月1日以後に新築の工事に着手したものであることが条件です[2]。
それより前に着手した建物でも登録できないわけではありません。地震に対する安全性に係る建築基準法などの規定に適合することを示せればよいとされています[2]。ただしその場合は、耐震性を確認できる書類の提出が必要になります[3]。
あわせて、消防法・建築基準法などの法令に違反していないこと(是正命令を受けていないこと)も条件です[3]。
設備の基準:台所・便所・収納・洗面・浴室
一般住宅として登録する場合、専用部分に台所、便所、収納設備、洗面設備、浴室またはシャワー室が備わっていることが基本です[3]。
ただし共用でも認められる形があります。共用にできるのは台所・収納設備・浴室またはシャワー室で、便所と洗面設備は専用部分に必要です[2]。これらを共同利用設備として備え、各居住部分に備える場合と同等以上の居住環境が確保されていれば基準を満たします[3]。築古のアパートや、リノベーションで共用部を充実させた物件が該当しやすい部分です。
家賃はいくらに設定すればよいか
家賃について、登録基準は金額そのものを定めていません。条件は「入居者の家賃の額が、近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失しないよう定められるものであること」です[2]。
つまり相場から大きく外れていなければよいということで、安くする義務はありません。「セーフティネット住宅にすると家賃を下げなければならない」という誤解がありますが、そうではない点は押さえておいてください。
申請はどこにする?窓口と流れ
申請は国交省の「セーフティネット住宅情報提供システム」から行います[4]。登録申請書の作成もこのシステム上で行い、添付書類は画像データやPDFにして貼り付けます[3]。
ただし審査・登録を行う窓口は自治体によって異なります。 たとえば川崎市では、公益社団法人かながわ住まいまちづくり協会が登録機関に指定されています[2]。都道府県が直接受け付ける地域、住宅供給公社や建築住宅センターが担う地域とさまざまです。まず自分の物件がある自治体のページで、どこが窓口かを確認するのが最初の一歩になります。窓口が分かりにくい場合は、居住支援協議会に問い合わせると、登録の相談先も含めて教えてもらえることがあります。
添付書類は自治体ごとに一覧が公表されています。昭和56年5月31日以前に着手した建物の場合は、前述のとおり耐震性を確認できる書類が追加で必要です[3]。
登録住宅と居住サポート住宅は何が違うのか
2025年10月の改正で「居住サポート住宅」の認定制度が新設されたため、2つの制度が並んでいます。混同しやすいので整理します。
| セーフティネット住宅(登録住宅) | 居住サポート住宅 | |
|---|---|---|
| 求められること | 要配慮者の入居を拒まない | 安否確認・見守り・福祉サービスへのつなぎ[1] |
| 支援の主体 | 大家・管理会社 | 居住支援法人等が大家と連携[1] |
| 手続き | 登録 | 認定 |
登録住宅は「断らない」ことが軸、居住サポート住宅は「入居後を支える」ことが軸です。まず登録から始めて、見守りの体制が整った段階で認定を検討する、という順序が現実的でしょう。居住サポート住宅の認定要件は「居住サポート住宅」の認定を受けるにはで詳しく扱っています。認定の前提になる見守りの体制を既存の物件でどう用意するかは、登録の次に要る安否確認の仕組みを見るところから具体的にできます。
まとめ:既存18㎡・新耐震・相場家賃なら、多くの物件が対象になる
登録基準を並べ直すと、条件はそれほど厳しくありません。
- 面積:既存住宅なら18㎡以上(一部共用なら13㎡以上)[2][3]
- 耐震:昭和56年6月1日以後の着手、またはそれと同等の安全性を示せること[2]
- 家賃:近傍同種と均衡していればよい(下げる義務はない)[2]
- 受け入れ属性:どの要配慮者を受け入れるかは選べる[3]
登録したうえで実際に受け入れを進めるには、保証・緊急連絡先・残置物といった実務の設計が要ります。判断基準は空室対策の新常識:ターゲットを高齢者に広げる判断基準、契約実務は高齢者の賃貸契約:残置物・保証・家財の実務チェックリスト、制度全体の見取り図は改正住宅セーフティネット法で不動産会社がやることにまとめています。
登録・認定を受けた住宅で使える家賃や保証料の補助については、家賃債務保証料の補助:誰が申請し、いくら出るのかで申請主体と金額の枠組みを整理しています。
- 住宅セーフティネット制度の概要、2025年10月1日施行の改正内容、居住サポート住宅における安否確認・見守り・福祉サービスへのつなぎ:国土交通省「住宅セーフティネット制度について」。mlit.go.jp
- 規模に関する登録基準(新築25㎡以上/既存18㎡以上/一部共用18㎡・13㎡以上)、構造・設備に関する登録基準(新耐震基準相当・昭和56年6月1日以後の着手)、賃貸の条件に関する基準(近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失しない)、登録機関の指定、令和7年10月1日からの面積基準等の変更:川崎市「セーフティネット住宅(登録住宅)」。city.kawasaki.jp
- 住宅確保要配慮者の範囲と属性の選択、規模基準(共同居住型は1人専用居室9㎡以上・住宅全体(15×A+10)㎡以上)、構造の基準、設備の基準(専用部分・共同利用設備)、申請の流れと添付書類:福岡市「セーフティネット住宅の登録制度について」。city.fukuoka.lg.jp
- 登録申請の受付および登録住宅の情報提供:国土交通省「セーフティネット住宅情報提供システム」。safetynet-jutaku.jp
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